映画『TOKYOタクシー』を観てきました

これから観る予定の方は、観終わってからよんでください。

偶然の出会い

私が応援している木村拓哉さんの映画『TOKYOタクシー』を観てきました。
物語は、タクシー運転手が偶然乗せることになった一人の女性との、たった1日の旅を描いています。

その女性は、いわゆる「おばあさん」なのですが、そう呼ぶのが失礼に思えるほど倍賞千恵子さんが演じる姿は可愛らしく、凛としていました。
道中、思い出を語りながらゆかりの地を巡っていく二人。目的地は葉山の高齢者施設で、その日は入居の日でした。
距離としては決して遠くはありませんが、思い出を辿る旅は、1日がかりになっていきます。

次第に心を通わせ、運転手は「今日はとことん付き合おう」と腹をくくります。
途中で一緒に食事をし、まるで昔からの知り合いのような空気が流れます。

別れ、そして予想外の展開

目的地に到着し、女性は感謝しながらタクシーを降ります。
物語の冒頭では、運転手の家庭が決して裕福ではなく、娘の学費にも苦労している様子が描かれていました。そのため、この別れ際、「何か多額のお金を受け取るのでは?」と一瞬思ってしまったのですが実際はその逆で、運転手はタクシー料金すら受け取り忘れてしまいます。
施設にはいる姿を見送りながら、後日面会にいき料金をうけとる約束を交わしました。

ところが1週間後、家族3人で訪れた施設で告げられたのは、女性がすでに亡くなっていたという事実でした。
葬儀に参列した運転手は、顧問と思われる司法書士に呼び止められ、遺言書を見せられます。持病のためもう先は長くないと知っていた女性は、タクシーを降りたあとすぐに手紙のかたちで遺言書をかいていたのです。そこには大きな額の小切手が同封されていました。

感動の場面で発動する、職業病

ここから、また私の職業病が発動します。
「相続税はいくらだろう?」
スマホの電源を切っているため、税率をすぐに調べられません。
囲の観客席からは鼻をすする音が聞こえます。明らかに感動する場面です。
それなのに、私は頭の中で相続税と準確定申告のことを考えていました。

ただ一つ、よかった、と思った点もあります。
もしタクシーを降りる際に何らかの形でお金を渡していたら、それは生前贈与となり、多額の贈与税がかかっていたはずです。
結果的にそれをしなかった判断は非常に現実的で、良い対応だったと思います。

法定相続人ではない人への遺贈の場合、基礎控除は使えますが、残額には税率がかかりさらに2割加算となります。

観客は高齢の女性が多く、この映画がどんな層の方に向けて作られているのかが客席の空気からも伝わってきました。
人生の終盤に何を大切にし、誰に何を託すのか。
そんなことを考える機会を与えてくれる映画でした。

記事担当:相馬